【 掲示俳句への感想 】 262 回 俳句ランド

   

   ≪ 天地人の発表 ≫ 

 皆さんの選句の天3点、地2点、人1点として、集計した上位句です。

  対象 261回 掲示俳句

天 15 飽食の世を啄めり寒鴉    正憲

天 17 大根引く地球に小さきクレーター 正憲

天 26 蝉声のごとき耳鳴り芭蕉の日  逸郎

地 3 どの鹿も人に親しく厳島    丈

地 23 日の当るなぞへの一家紙を漉く  逸郎

地 32 かくれなき枯野となりて道半ば  春生

人 1 日をはじく瀬戸のさざなみ牡蠣筏 丈

人 36 冬の日や円空仏の粗削り      春生

人 37 被災地の寒夜の灯り二つ三つ    春生

 

 

     ≪ 感 想 ≫ 対象261回の掲示俳句

  1 日をはじく瀬戸のさざなみ牡蠣筏 丈

 ・ 美しい光景を詠まれましたね。 但し 牡蠣筏は季語にならないのでは。?

“牡蠣棚に瀬戸のさざなみ冬日燦”ではどうだろうか。? 【人】(My)

 ・ 「はじく」よりベターな言葉はないかなあ。(If)

 

 2  潮満ちて小春日和の厳島    丈

 ・ 調べが一本調子になっているので上五で切れを入れたい。 “小春日や潮の満ち来る厳島”など工夫されたい。(My)

  ・ まとまっていると思います。(If)

  

 3 どの鹿も人に親しく厳島    丈

   ・ 「親しく」は、具象化できないかなあ、 [地]  (If)

   ・ 実景は厳島での光景かも知れないが、この場合厳島の措辞は不要かと。(My)

  

 4 ロープウェイ降り山頂へ落葉径 丈

  ・ 散文調になってしまったのが少し残念。 作者は何処に感動したのだろうか。?(My)

  ・ まとまっていると思います。(If)

 

  5 冬霞して江田島の今昔    丈

  ・ 作者は江田島の海軍兵学校跡地を訪れたのであろう。下五の“今昔”が言い過ぎているように思う。“江田島の明治の校舎冬霞”など写生されたい。(My)

 ・ 5は独善的か。 (If)

 

  6 水鳥を遊ばせ錦帯橋の反り  丈

  ・ まとまっていると思います。(If)

 

  7 山頂に白亜の天守冬青空   丈

  ・ 山頂にお城があるのだろうか?。天守はお城の一番高いところにあるので敢えて山頂と言わなくてもと思った。(If)

 

  8 小春日の金子みすゞの生家跡 丈

  ・ “小春日や”と上五で切りたい。 (My)

  ・ 天才詩人の金子みすゞですね。まとまっていると思います。 (If)

 

  9 島裏は切り立つ岩場冬怒濤  丈

  ・ 上5は、よりベターな言葉はないかなあ。(If)

 

 10  鯉太る津和野殿町小六月   丈

  ・ 津和野殿町を知らない者にも、少しは気分がわかるようだが・・・。(If)

 

 11 寒灯や木喰さんの鑿の音   正憲

  ・ かの遊行僧の木喰上人。諸国を行脚して仏像(木喰仏)を彫ったという。寒灯の下で木喰仏を見ているのであろう。聞こえる筈のない鑿の音が聞こえてくるという。「亀鳴く」ともいうのだから、鑿の音を聞き取ってもよいのだろう。 (Jt

  ・ 木喰(もくじき)とは、火の入った食物をとらず、木の実や 果実のみを食して、

肉類、米穀、野菜を常用しない修行。修行した僧を木喰上人という。

 円空と木喰の二人は全国を旅し、大寺院ではなく名も無き人々のために、

膨大な数の 木彫りの仏を残したという。

 掲句は、寒い深夜まで明かりをつけて、仏像彫りしている鑿の音でしょう。(If

 

 12 飴色の旧家の柱冬に入る   正憲

  ・ この旧家は囲炉裏などのない格式の高い家なのだろう。磨き込まれて飴色の大黒柱。今ほどの暖房の無かった昔は寒かったろうなぁ……と。共感。 (Jt

  ・ 昔の素材の良さを感じます。(If

 

 13 枯野より枯野へ一両電車かな 正憲

  ・ 二つの枯野? 否、ローカル線の駅の周辺には街並みがあるのだろう。駅の手前も先も枯野。風景が見える。 (Jt

  ・ 淋しさを感じます。(If

 

 14 俎板を洗ふ勤労感謝の日   正憲

  ・ まさか俎板さんいつも有難う、という気持ちで洗っている、というのではあるまいが……? 作者は調理人?? 感謝の対象は誰かなぁ?  (Jt

  ・ 料理人だろうか。(If

 

 15 飽食の世を啄めり寒鴉    正憲

  ・ 恐らく食の豊かさ故の食べ残しを鴉が啄ばんでいるのだろうが、飽食の世を啄むという。何やら空恐ろしい。勤倹節約などは昔のこと。もっと消費せよ、もっと浪費せよ、と言わんばかりの世の中。そんなことを連想させる句。中七は言いすぎの感がないでもないが、共感。『天』 (Jt

  ・ 食べ物でなく、世を啄むが詩的なんでしょう。(If

 

 16 円卓は樽の底板実千両    正憲

  ・ 屋外での飲食なのだろうか? 野趣のある雰囲気。この季語の斡旋は、質素を讃える?  (Jt

  ・ 特異な光景ですね。(If

 

 17 大根引く地球に小さきクレーター 正憲

   ・ その通りですが、おもしろい。 [天] (If

  ・ 引き抜いた後の穴をクレーターと見た。なるほど……。(Jt

 

 18 大根畑褒めて一本貰ひけり    正憲

  ・ 誰でも自分の苦労を認めてもらうと嬉しいもの。一本といわず……。 (Jt

  ・ その通りですね。(If

 

 19 鯛焼きや魚籠のごとくに紙袋   正憲

  ・ 生き物みたいな感じも少し。紙袋で現実に戻るが……。むかし子供が聴いていた「泳げ鯛焼君」を思い出した。素直な表現に好感。 (Jt

  ・ 鯛焼を入れた紙袋が、あたかも生きた鯛をいれているようにみえたのでしょう。(If

 

20 銀河鉄道トイレ車両のアナウンス 正憲

  ・ これを季語として扱うのは?? (Jt

  ・ トイレが唐突な感じか。(If

 

21 歓喜かも悲痛かも知らん鹿の声 逸郎

  ・ 中八は気になるので解消したい。 “歓喜かも悲痛なのかも鹿の声”くらいでどうでしょうか。? (My)

  ・ 歓喜の声とも悲痛の声とも聞き取れる鹿の声。確かに……。 (Jt

 

 22 紙漉の里と言はれて一家住む  逸郎

  ・ 紙漉きの里が季語になるのか。? 少々気になる。(My)

  ・ この里を守るという使命感で生きている一家なのだろう。 (Jt

 

  23 日の当るなぞへの一家紙を漉く 逸郎

 ・ 穏やかな山あいの紙漉きの家。金満家ではないかも知れないが、豊かな生活がありそう。『地』 (Jt

  ・ “日の当たる”の措辞は要らないと思うがどうだろうか。? “紙を漉く音やなぞへの一家族”でも句意は伝わると思うが。? (My)

  

 24 隆隆たる腕休みなく紙を漉く  逸郎

  ・ 調べが散文的なのが少し気になる。 “休みなく紙漉く漢(或いは女)腕太し”(My) 

  ・ 長年の家業の紙漉きの丈夫。 (Jt

 

 25 紙漉を継ぐちふ女の子腕捲る  逸郎

  ・ 敢えて女の子と言わずに単に子でも良いのでは。? “紙漉きを継ぐといふ子や腕捲る” など調べを整えたい。(My)

  ・ 頼もしい娘御。 (Jt

 

 26 蝉声のごとき耳鳴り芭蕉の日  逸郎

  ・ 一読 芭蕉の“閑さや岩にしみ入る蝉の声”が思い起こされる。作者は耳鳴りを患っているのであろう。

実際は芭蕉の心境とは程遠いのでは。? 折しも芭蕉忌 面白い。 【天】(My)

  ・ さて? と思ったが、例の「岩にしみ入る蝉の声」とイメージが重なるのだろうか? (Jt

 

 27 冬ざれや匂ふがごとき獣道   逸郎

  ・ 一句一章の句なので“冬ざれに匂ふが如し獣道” など工夫の余地があるのでは。? (My)

  ・ 中七はどんな風景なのだろうか? 冬ざれの獣道……なのだが。 (Jt

 

 28 霜柱踏めば音するなほ踏めり  逸郎

  ・ 作者はおそらく霜柱を踏んだ感触が良かったので尚踏み続けたということであろう。 ならば中七は“踏めば佳き音”では。? 

 (My)

  ・ 思わず童心に帰って……。 (Jt

 

  29 阿吽像共に着脹れてはをれず  逸郎

  ・ 句意が良く分からない。 (My)

  ・ 山門の仁王像であろうか? 神社の狛犬なども阿吽の形だが……。確かに着膨れてはいない。 (Jt

  

 30 年号の変わる新年腰伸ばす   逸郎

  ・ 今年は平成最後の年。従来は一世一元だったが……。気持ちを切り替えて……、ということだろうか? (Jt

 

 31 会釈して鏡をゆずる冬帽子       春生

  ・ 季語の冬帽子が余り活きてないように思う。 下五は“小六月”の方が良いのでは。? (My)

  ・ 知らぬ者同士が同時に使う鏡。例えば公衆便所など。手を洗うついでにちょっと身繕いをする。次の人が手を洗うために待っている。どうぞ、というつもりの会釈と眼差し。何となく癒される雰囲気。やはり冬帽子かなぁ。 (Jt

  ・ 中7?。(If)

 

 32 かくれなき枯野となりて道半ば  春生

  ・ 作者ご自身の境涯を詠まれたのであろう。 下五の道半ば“に作者の忸怩たる思いを感じる。 【地】(My)

  ・ すっかり枯れ尽くした、という意味だろうか? 写生からはやや外れそうだが、目指すところを思えばまだ道半ば、しかし到底到達できそうもない、などという感懐を思わせる。 (Jt

  ・ 人生の道であろうか?。(If)

 

 33 聖誕祭抱けば泣きやむ赤子かな 春生

  ・ 取り合わせの句だが付き過ぎと思う。 (My)

  ・ マリア様に抱かれた聖像とイメージが重なるのだろうか? このカナどめはどうだろうか? (Jt

  ・ そうでしょうねというだけのことだろうか?。(If)

 

 34 霜柱ゆるぶ魔法の消ゆる時 春生

  ・ 魔法にかけられた状態はどんな場面、どんな姿だったのだろうか? 精神的にホッとした状態が季語なのではあろうが……。 (Jt

  ・ 神様の魔法だろうか?。(If)

 

 35 地下壕の入り口狭し冬の雨 春生

  ・ 防空壕のイメージだが、沖縄には「がま」があり、そこに惨劇があった。寒々とした光景。 (Jt

  ・ 地下壕は場所により予想外のものが多いらしい。(If)

 

 36 冬の日や円空仏の粗削り    春生

 ・ この季語は二つの意味があるが、ここでは冬の日差しに関わる方であろう。

かの円空仏は荒削りゆえの暖かさがある。木喰仏とは異質の暖かさ。冬の日向が似つかわしいかも……。『人』 (Jt

  ・ “円空の一木造り冬ざるる”など推敲の余地がありそう。 (My)

  ・ 円空仏とは、円空の彫った仏か、円空の形に彫ったものだろうか。(If)

 

  37 被災地の寒夜の灯り二つ三つ    春生

  ・ 被災地ではどんな災害かわからないので、上5は「天災地」としては?。大きな災害の場合は、傍観・的俳句はは避けたい。この句は感情的でないのがよい。 [人] (If)

  ・ 災害大国、などという言葉も聞かれる昨今。そこの夜寒を象徴するような「灯り二つ三つ」 他人事ではない。 (Jt

 

 38 妻を呼ぶ冬夕焼けの褪せぬまに 春生

  ・ 冬夕焼は地平線が赤々と染まるがみるみる消えてしまう。おい、来てごらん、と声をかける。些細なことでも感動を共有できる夫婦。 (Jt

  ・ 人柄がわかるようです。(If)

 

 39 年の瀬の訃報の多し災多し 春生

  ・ 下五は「サイオオシ」であろうか? 「災い」であるので意味は十分分かるが……。訃報が年末に集中したのはわかるが、災害までは実感がない。 (Jt

 ・ 訃・災のどちらかは吉報にしてはどうでしょう。(If)

 掲示俳句への感想 以上 

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       【兼題の俳句への感想 】 262回 俳句ランド

 次回263回の兼題は、 「 下萌」  「蕗の薹 」  (両方とも派生語を含む) とします。 奮って投句下さい。

参考: 262回の兼題は、 「 初笑」  「 雪掻 」  

  兼題の俳句への感想は、このページをコピーして、感想の最後に 俳句太郎なら

(Th)と 記入して、 連絡先 へメール下さい。

 

   対象:261回の兼題 「 おでん 」  「 冬ざれ 」  

  菜園のものもたつぷりおでん煮ゆ  丈

  ・ 中7の後の「も」はいれないでまとめたいが・・・。(If)

 

  若かりし日のおでん屋とコップ酒  丈

 ・ 「若かりし日の」はやや独善的か。(If)

 

  キャタピラーゆく冬ざれの河川敷  丈

 キャタピラーは力強い。(If)

 

  冬ざれやここにも耕作放棄の田   丈

 「ここにも」は「ここら」としては。(If)

 

  冬ざれの野やはたてには富士かすか 丈

 中7はよくわからない。(If)

 

6 解体の校舎露わに冬ざるる    正憲

 ・ 解体中の校舎がシートに覆われるでもなく……というところ? まさに冬ざれ、ましてや母校ならば……。 (Jt

 ・ 「露わ」は「露は」では。こう云う冬ざれもありでしょう。(If

 

7 冬ざれのビルへ噛みつく重機かな 正憲

 ・ 面白い中七の表現。ビル解体の風景も似つかわしい。 (Jt

 ・ おもしろい。(If

 

8 能面の敦盛の頬冬ざるる     正憲

 ・ 能面そのものよりも、演目の哀れさに冬ざれを感じている?  (Jt

 ・ 敦盛は討たれた方なので、可哀そうな気もします。(If

 

9 冬ざれや住職留守の寺の庭   逸郎

 ・ 無住寺? それとも長期出張? 庭が荒れてしまっているのだろうか? (Jt

 

10 人を見ぬ浜辺の砂丘冬ざるる  逸郎

 ・ 砂丘は普通浜辺にあるものかも……。人影のない砂丘、風紋のみが……淋しそう。 (Jt

 

11 コンビニのおでんに珈琲驚かず 逸郎

 ・ こんな取り合わせはまさに意外! 若い世代は驚きもしない。我々も段々驚かなくなる。なるほど。 (Jt

以上