【 掲示俳句への感想 】 260 回 俳句ランド

   

   ≪ 天地人の発表 ≫ 

 皆さんの選句の天3点、地2点、人1点として、集計した上位句です。

  対象 259回 掲示俳句

 

 天   13 神木の走り根太し秋祭    正憲

地 31 原色のもの無き月の些中庵  逸郎  

地 41 ハンガーの処々に増ゆるも冬支度 逸郎  

地 23 渡り鳥恋路ヶ浜の空仰ぐ   史

人 9   秋天へ穂先するどく杉木立  丈  

人 35 水琴窟傍へに月を待ちにけり 逸郎  

4位  28 水澄むや動くものいる池の底 史

 

    ≪ 感 想 ≫ 対象259回の掲示俳句

1  稔り田の照りこんじきの佐久平         丈

  ・ 佐久平(佐久盆地?)の特徴は米どころなのだろう。照りとこんじきはイメージが近い。 (If)

  ・  金秋の佐久平への挨拶句とだろうが、稔り田は季語にならないのでは。?(My)

 

2 姨捨の棚田の稲架の馬の黙   丈

   ・ 「の」のリフレーンで畳みかけるようですが、ややこしく感じた。(If)

   ・  助詞の「の」を4つも重ねて結局「黙」だけを言いたかったのか。? (My)

 

3 渓へ迫り出してもみづる岳樺  丈

 ・ 岳樺の樹皮は白く(淡褐色)ならず、亜高山のシラカバより高所に生ずるらしい。

岳樺の知名度はどのくらいか知らないが、他の樹木でもよいのでは。(If)

  ・ 調べが良くないので“もみづるや渓へ迫り出す岳樺”など工夫されたい。(My)

  

4 這松を分けて色めく七竈    丈

   ・ 七竈らしい。(If)

 

5 狭霧去り峨々たり千畳敷カール 丈

 ・ イメージできない。(If)

 

6 明月を愛づ奥飛騨の露天風呂  丈

   ・ 星月の綺麗な所の露天風呂、いいですね。 (If)

   ・   調べが一本調子なので切れ字を使ってみてはどうか。? “奥飛騨や明月愛づる露天の湯”(My)

 

 7 秋冷の穂高やほのと湯の煙   丈

   ・ 天然湯でしょうね。 (If)

   ・     “秋冷の穂高”が季語の本意から少し外れているように思われるが。?(My)

  

8 あれが槍こちらが穂高秋高し  丈

   ・ わかりやすい。(If)

   ・  五、中七が安易な措辞なのでもったいない感じがする。“槍穂高つなぐ稜線秋高し”など推敲されたい。(My)

 

 9 秋天へ穂先するどく杉木立   丈

   ・ 杉らしい。 [地]  (If)

   ・ 6番の句と同様に上五で切れ字を入れ詠嘆した方が良いのでは。?“秋天や穂先鋭き杉木立”など。(My)

 

 10  秋雲をしりぞけ南八ヶ岳    丈

 ・ 秋雲は鰯雲など横に広がるイメージがあるので、

「しりぞけ」は他に工夫したい。(If)

 

11 結界に色を違へし曼珠沙華  正憲

  ・ 結界との境に、たまたま色違いがあったのでしょうね。(If)

  ・ 景はよく分かるのだが……。 (Jt)

 

12 結界を秋の揚羽の行き戻る  正憲

  ・ 偶然の面白さでしょうか。(If)

  ・ 11番と同様に……。仏でも神でも結界は神聖な場所なのだが、どう理解してよろしいのか……? (Jt)

 

13 神木の走り根太し秋祭    正憲

  ・ 力のありそうな神木ですね。 [天] (If)

  ・ 神木だけあって巨木なのだろう。由緒ある社らしい。盛大な祭りなのだろう。よく分る。『人』 (Jt)

 

14 嬰児を抱く腕細し秋桜    正憲

  ・ 腕を二のうでと読むのだろうか。(If)

  ・ あまり細いと不安になるが程よく細いのだろう。その方が季語に似つかわしい。さぞかし美人の若い母。 (Jt)

 

15 ダンボールの値札の湿り野分前 正憲

  ・ 何かの値段を書いた段ボールの湿り?、それとも段ボールの値段を書いたものしめり?。(If)

  ・ ややはっきりしないが、ダンボールに例えば野菜など入れて売られているのだろうか? そこに値札が立てられて(?)ある。湿気を帯びた風のためか値札がしっとりと……と理解してよろしいのだろうか? (Jt)

 

16 らふそくの炎の揺らぎ台風裡  正憲

  ・ 家族揃って蝋燭のあかり火を囲んでいる様を想像した。(If)

  ・ 現在台風が通過中。蝋燭の炎が揺らいでいる……という。どんな場所にある蝋燭なのだろうか? 閉め切った部屋にあるのに……ということか? (Jt)

 

17 短冊の消しゴムの屑獺祭忌   正憲

  ・ 短冊の文字や絵を、消しゴムで消す?。(If)

  ・ この短冊は句会で使われる小さな短冊であろうか? ボールペンで書く人もいるが、多くは書き誤ったときのために鉛筆で書く。珍しいことだがその短冊に消しゴムの屑が付いている、という。句会の場で、そうだ今日は子規の忌日だ……と、改めて感慨を深くする、のであろう。 (Jt)

 

 18 切り株となりし神木秋津飛ぶ  正憲

  ・ 淋しいが、秋津が来てくれて、和む気がしたのかな。(If)

  ・ 老いたのか、あるいは台風の禍なのか、見事な神木であったが、今は切株。そこに赤とんぼが飛んでいるという。無念さが秋津に? (Jt)

 

19 パレットに絵筆の運ぶ秋の色  正憲

  ・ パレットに運ぶ?。パレットに色を作り上げるのでは。(If)

  ・ なるほど、こういう言い方もできそうだ。パレット上で例えば赤と黄を混ぜ合わせる。それは絵筆ですること。 (Jt)

 

20 投函の履歴書二通小鳥来る   正憲

  ・ 投函したばかりなのに、早も小鳥が吉報の返事を以て来たらしい?。 (If)

  ・ 新たな職を求めるのでもあろうか? 履歴書郵送。緊張感よりも心うきうき……かな? (Jt)

 

21 試歩の杖つきて見上ぐる渡り鳥 史

  ・ 「つきて」は「止めて」としたい。(If)

  ・ あんなふうに軽快に行動したいもの……気持ちがわかる。共感。 (Jt)

 

22 地震後のブルーシートや鳥渡る 史

   ・ この季語最適だろうか。(If)

   ・ 敢えて地震後と説明しなくても“屋根上のブルーシートや鳥渡る”で充分句意は読者に伝わると思うが。?(My)

   ・ それは多くの場合屋根に掛けられる。やれやれと思いつつ見上げるブルーシート。その彼方には渡り鳥。復興の兆しを感じているのかも……。 (Jt)

 

23 渡り鳥恋路ヶ浜の空仰ぐ        史

  ・ 「恋路ヶ浜の空仰ぐ」の誤植。ここは伊良湖岬。鷹の渡りで有名なところ。芭蕉の句もある。遠い昔に想いを馳せるのかも……。『地』 (Jt)

  ・ 恋路が浜といえば鷹の渡りで有名な伊良湖岬。ここは鷹の渡りの方が良いのでは。?“鷹渡る恋路が浜を旋回し”など  工夫されたい。 【人】(My)

  ・ 句形としては2段切れをさけて「空仰ぎ」としたい。(If)

 

24 庭園の池に映りし薄紅葉    史

  ・ 切れが欲しいような。(If)

  ・ いつ見てもいいもの。 (Jt)

 

25 草紅葉ふらつく足は傘の杖   史

  ・ 理がでてしまった。(If)

  ・ お大事に。いつまでも俳句の眼差しを……。 (Jt)

 

26 夕紅葉白い土蔵に影落とす   史

  ・ 紅葉の影だろうか?。2段切れの感じがします。(If)

  ・ 白い土蔵と紅葉。あまり影に注目したくないが……。 (Jt)

 

27 閼伽堂へ朱の橋渡る紅葉晴   史

  ・ この句の朱と紅葉葉は色が出過ぎた感じがする。(If)

  ・ 閼伽堂の朱、朱の橋、紅葉と朱のオンパレード。少々やり過ぎと感じてしまう。(My)

  ・ 仏教で使う水を汲む井戸のあるところ、閼伽井屋、閼伽井堂と呼ばれるようだ。どこぞの大寺の景か。厳かな雰囲気。「アカ」「シュ」「モミジ」面白く繋がった。 (Jt)

 

28 水澄むや動くものいる池の底   史

  ・ 「水澄むや池の底ひに動くもの」としてみました。 [人] (If)

  ・ ここは語順を替えれば調べがよくなります。“池底に動きゐるもの水澄めり” (My)

  ・ 池に生き物は当たり前のようだが、鯉や亀など目立つものではないのだろう。水が澄んだ時にだけ見える生き物、それは? (Jt)

 

29 些事雑事一日忘れて秋の苑    史

  ・ 中7を「忘れて一日」としてみました。(If)

  ・ 慎ましいながらも落ち着いた美しさを味わわせてくれる秋の園。ここにも非日常の楽しみがあった。 (Jt)

 

30 弱き足を励ましくるる小鳥かな  史

  ・ 「弱き足なれど小鳥と歩を伸ばす」としてみました。(If)

  ・ 人の体は足から衰える、のだろうか? 近くの公園に行ったらジョギングの人、ウオーキングの人がいっぱい。まだまだ歩ける、無理はできないが。外へ出れば小鳥たちが励ましてくれる、と思う昨今。 (Jt)

 

31 原色のもの無き月の些中庵   逸郎

 ・ 芭蕉ゆかりの些中庵、芭蕉の「蓑虫の声聞きに来よ草の庵」から蓑虫庵とも呼ばれる。木々に囲まれたひっそりとした草庵なのであろう。月夜の蓑虫庵。枯淡というか、侘寂というか……ひとつの世界。『天』 (Jt)

  ・ 些中庵は芭蕉の門人である服部土芳の草庵。作者は明月の頃、同庵へ行かれたのであろう。

  “原色のもの無き”だけの措辞では良く分からない。(My)

  

 32 月の庵句歌に詠まれしこの草木 逸郎

  ・ 句形が上五、下五が体言なので“きせる型”と言って中七が両方に掛かってしまうので少し紛らわしい。(My)

     ・ 33番の句も同一の場面。秋桜子も訪れたとか。 (Jt)

 

33 月の庵この木この草句歌の種  逸郎

  ・ 作者の感情が少し前面に出過ぎた感があるので馴染めない。(My)

 

 34 三輪山の月の木や石神宿る   逸郎

  ・ 三輪山全体が御神体の山なので“神宿る”は言わずもがなと思うが。?(My)

      ・ 月光に照らされた三輪山の木々や石。すべてに神が宿ると感じるのも三輪山なればこそ……と。 (Jt)

 

35 水琴窟傍へに月を待ちにけり  逸郎

  ・ 水琴窟を聞きながら名月を上がるのを待っている場面であろう。地中の底から聞こえる水琴窟の音と天上の月との構図が面白い。【地】(My)

  ・ 秋の夜空にくっきりと清らかな月。水琴窟に時々耳を傾けて清らかさ、透明感はこの上ない。目から耳から……。 (Jt)

 

36 枝ぶりの踊るがごとし月の松  逸郎

  ・ 綺麗に仕立てられた松であろうか? 月光に照らされて踊っているかのようだ……と。なるほど。 (Jt)

  

37 暁光に匂へる蕎麦の花盛    逸郎

  ・ 夜明けの深閑とした空気が漂っている雰囲気なので花盛の措辞が気になってしまう。 (My)

  ・ 蕎麦の花の匂いをあらためて嗅いだことはないのだが、噂によると堆肥の臭い、糞の匂いなんだとか?? 遠くから見た感じとはほど遠い、というのだが……? 朝日に照らされて白々と一面に咲く蕎麦の花は美しいし郷愁を呼ぶ。 (Jt)

 

38 山の辺の道に人見ず吾亦紅   逸郎

  ・ 吾亦紅は実景なのかもしれないが安易な斡旋に思えてしまう。 (My)

     ・ 例の古道、山辺の道。吾亦紅の咲く頃、人影が見えない。行程が長いのでたまたまその辺りに人が見えなかったのだろうか? 閑静な秋の古道がよい。万葉の世界に思いを馳せて……。 (Jt)

 

39 のっそりと猫来て飛蝗驚かす  逸郎

  ・ バッタが何匹か急に飛び立った。そこには猫が来ていた。バッタを襲うつもりではなかったのだろうが……。 (Jt)

  

40 ほの暗くなるも牛舎の隙間張る 逸郎

  ・ 目貼のことか。最近は住居の目貼はないだろうが、ここでは牛舎の目貼をしている。日暮れの早い時期、暗くなるまで……。 (Jt)

 

 41 ハンガーの処々に増ゆるも冬支度 逸郎

  ・ 冬物のいくつかを箪笥から出してハンガーへとりあえず吊るしているのであろう。現代の冬支度の様子を活写してをり共感できる。 【天】(My)

  ・ 冬物を掛けたハンガーが次第に増えてきた。まさに身近な冬支度。 (Jt)

 以上

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       【兼題の俳句 への感想】 260回 俳句ランド

 次回261回の兼題は、 「 おでん 」  「 冬ざれ 」  (両方とも派生語を含む) とします。

参考:260回の兼題は、 「 芭蕉忌 」  「 冬暖(ふゆあたたか・ふゆぬくし)  」  (両方とも派生語を含む)

 奮って投句下さい。 

   感想の最後に 俳句太郎なら(Th)と 記入して、 連絡先 へメール下さい。

 

   第259回 兼題の俳句は、 「飛蝗(ばった)  」  「 茸(きのこ・たけ)  」  (両方とも派生語を含む)

  1  なつかしき野路はたはたに迎へられ 丈

 ・ まとまってはいます。(If)

 

  精霊蝗虫たちつぐ耕作放棄の田  丈

 ・ この蝗虫と地主さん又は作者の気持は想像しにくい。(If)

 

  輸入物かもと思へど松茸飯    丈

 ・ 輸入物であっても食べて見たい気持ちがわかります。(If)

 

  名も知らぬ茸の生ふる庭の隅   丈

 ・ さあどうします。毒茸と思い食べないで捨てる?、どこかに毒の有無を問う?。 (If)

 

  蹴ればいと脆くて庭の大茸    丈

 ・ さあどうします。毒茸と思い食べないで捨てる?、どこかに毒の有無を問う?。 (If)

  

6 牧の馬背なに飛蝗を負ひもして  逸郎

  ・ 馬が蝗をおんぶしているとみるのもユーモラス。 (Jt)

 

7 丘までも越えんと飛蝗飛びに飛ぶ 逸郎

  ・ あの小さな体で、力強く飛んでゆくのだろう。 (Jt)

 

8 毒の有無関はり無げに茸生ふ   逸郎

  ・ 稲作地帯で育った私には茸狩の体験はない。毒茸か否かを見分ける力もないのだが、いかにも毒があるぞ〜という姿かたちのものはないようだ。見た目には美しいものもあるようだし……。 (Jt)

 

9 煙茸干上がるもなほ煙噴く    逸郎

  ・ 煙茸は食用にもできるというのだが実際には見たことも食べたこともない。踏んづけると煙のような埃のようなものが飛び散るという。食用にするには干すのであろうか? 干し上がっても圧せば煙を噴くという。 (Jt)

 

10 茸汁の香り楽しむひとりの夜   逸郎

  ・ 時は秋、ひとりの夜。もの寂しさが定番なのだろうが、茸汁の香りに癒されるひと時。 (Jt)

  以上